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『ニューヨーク便り』 No. 40: 2005.5.5

ひとりだけの反戦運動

先日イースト・ビレッジ地区を歩いていると、8ストリートとラファイエット・ストリートの交差するアスター・プレイスという場所で人だかりを目にした。警察車両も数台止まっている。何があったのかと人の視線の方に目をやると、信号機の上にキリストが十字架に掛けられたように備え付けられている。人形かと思うと、これが人間なのだ。信号機の半ばの高さ3メートルほどに設置された歩行者用の信号機の箱の上に、背中に棒を横に付け、その棒に赤い布で手をくくり付け、上半身裸、腰に赤い布を付けた人間が、背中を信号柱にもたれ、立っているのだ。裸の腹には赤い文字で「AMERICA NO WAR」と書かれているキリストに扮したその男性は、もうろうとしているようで、また時折気怠い視線を人だかりにおくる。数人いる警官は何もしていない。すぐにこれがイラクなどで行われているアメリカへの戦争反対抗議だということがわかった。見学している人々は、何かをささやき合い、観光客は写真を撮っている。また最近やっと普及しだした、携帯電話のカメラで写真を撮っている地元の人たちもいる。そのような中、時々拍手が聞こえる。5分ほどして、箱形トラックの警察車両がやってきて、いままで黙って見ていた警官が見物人に「離れろ」とキリストから我々を遠ざける。ここで人々からブーインがあがる。箱形のトラックの上部が開けられ、警官が出てくる。トラックの上部が、ちょうどキリストが立っている高さに一致しているので、そこに立った数人の警官がキリストを柱から引き離す。キリストは抵抗はしない。これを見ていた人々はさらにブーイングをあげる。キリストは信号機からトラック上部に腹這いにさせられ、動けないようにオレンジ色のプラスチック製と思われる帯で体を縛られた。そしてキリストはゆっくりとトラックの上部から内部に消えていった。この時、人々から拍手があがった。

彼は活動家なのか、芸術家なのか。ニューヨークではこのような抗議運動は珍しくない。アメリカが世界で力任せに他国を押さえつけていても、国内では常にこのような反対運動がある。これが私を始め多くの人がアメリカを愛することができる理由である。

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