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『ニューヨーク便り』 No.21: 2003.4.15

ニューヨーク演劇情報

ニューヨークは金融の首都であるとともに、演劇の首都でもある。30人はいれば一杯になる小劇場から1000人は軽く入る大劇場まで、通常の演劇、ミュージカルからパフォーマンス、前衛演劇まであらゆる形態が混在する。現在景気の後退、観光客の現象により、劇場は厳しい状態である。

ブロードウエイのミュージカルでは現在昨年夏にオープンした「ヘアスプレー」という1988年の同名映画を基にした作品が1番人気である。2001年トニー賞で最優秀作品賞に輝き、過去最大の12部門のトニー賞を制した「プロデューサー」、6年目のロングランに入った、家族で楽しめるディズニーの「ライオンキング」、人気音楽グループ、アバの曲を使った「マンマ・ミア」も依然根強い人気である。ロングランを続けているのは、昨年のトニー賞最優秀作品賞の「ソローリー・モダン・ミリー」、「レント」、「オペラ座の怪人」、ディズニーの「美女と野獣」と「アイーダ」、リバイバル組として「キャバレー」、「シカゴ」、「フォーティセカンド・ストリート」である。「レント」と同様にオフ・オフの小さい劇場から這い上がってきた「ユーリンタウン」も健闘している。昨年後期からの新作としては、12月にオープンした、映画「ムーラン・ルージュ」の監督バズ・ラーマン演出のオペラ「ラ・ボエーム」、10月にオープンしたビリー・ジョエルの音楽を利用した「ムービン・アウト」も人気がある。今年に入っては、映画俳優のアントニオ・バンデラス主演のリバイバル「ナイン」は4月10日にオープン。同じく映画俳優バーナデット・ピータース主演のリバイバル「ジプシー」は5月1日オープンに向けて、プレビュー公演中である。1980年のジョン・トラボルタ主演映画をミュージカル化した「アーバン・カーボーイ」は3月27日にオープンした。近年のミュージカルは制作費が高騰しているため新作をのせるより、かつて評価が良かった作品のリバイバルを再演することにより、リスクを少なくしているので、新作の上演が控えられている。しかし新作ミュージカルは制作費が安い、中規模のオフ・ブロードウエイで上演され、評価いかんによってはオン・ブロードウエイにのせようと狙っている。「レント」と「ユーリンタウン」はそのような小さな劇場から上がってきた例である。16年のロングランを続けた「レ・ミゼラブル」は残念ながら5月18日に終演となる。

ミュージカルではない普通の芝居、ストレート・プレイとしての話題作は、映画俳優のアル・パチーノとマリサ・トメイ主演、オスカー・ワイルドのリバイバル「サロメ」である。現在プレビュー公演で4月30日にオープンするが、限定59公演で終わる。ピュリツァー賞受賞作、ユージン・オニールのリバイバル「ロング・デイズ・ジャーニー・インツー・ナイト(夜への長い旅路」は、バネッサ・レッドグレイブ、ブライアン・デネヒー、フィリップ・セイモア・ホフマン、ロバート・ショーン・レナードといった人気大俳優が勢揃いする。18週間の限定公演だ。さらにヘレン・ハントが13週間限定の「ライフX3」に出演する。

オフ・ブロードウエイではパフォーマンスの「ブルー・マン」と「ストンプ」がロングランを続けている。「ブルーマン」はラスベガスの大劇場でもオープンした。がんばっているのが、シェークスピアの「真夏の夜の夢」を70年代のディスコ宮殿に舞台を移した「ザ・ドンキー・ショウ」、男性が裸で歌って踊るレビュー「ネイキッド・ボーイズ・シギング」。98年6月にオープンして以来人気だったパフォーマンスの「デ・ラ・グアルダ」は残念ながら5月4日で終演となる。かつて寂れていた42ストリートがタイムズスクエアから8番街にかけては、劇場、映画館、ライブハウス、ヒルトンホテル、吉野家、キティーランド等が並び、華やかになり、さらに西に延び、シアター・ロウと呼ばれていた9番街から10番街のオフ・ブロードウエイの劇場もきれいになっている。ここではあまり、またはまったく商業的価値を求めない良質の作品が上演されている。ミュージカルはほとんど上演されないが、良質なダウンタウンのカンパニー、シアター・フォア・ア・ニュー・アライアンスやニューヨーク・シアター・ワークショップのなどは芸術的な演劇を見せてくれる。

100席以下のオフ・オフ・ブロードウエイではロングランされるものはほとんどないが、なかなか良質なものもある。また実験的前衛劇が多いので、好きな人にはたまらないし、入場料が10−20ドルと安いのもいい。ミュージカルでもブロードウエイの大劇場のように豪華ではないが、料金を考えれば、十分楽しめるものもたくさんある。演劇好きがチェックすべきところは、寺山修司や東京ブラザースなど日本の劇団も足を踏み、世界中の演劇や前衛演劇が集まるラ・ママやP.S.122、ヒア、キッチンなどで前衛アメリカ演劇、世界演劇の状況を覗くことができる。かつて寂れていたローワーイーストサイドは90年代の景気拡大と治安改善によりバー、レストランなどとともに小さな劇場ができ、演劇関係者には喜ばれたが、景気後退、補助金及び寄付の現象によりサーフ・リアリティなどの劇場が閉館に追い込まれている。

マンハッタンの家賃の上昇とともにマンハッタンから地下鉄で1つ目の駅があるブルックリン橋、マンハッタン橋の下あたりでは寂れた倉庫がギャラリーや劇場に変わってきている。それにともないバー、レストラン、スーパー、コンドミニアムまでできて、街を形成しつつある。ブルックリン橋とマンハッタン橋の間には、セント・アンズ・ウエアハウスという劇場があり、映画俳優ウィレム・デフォー属する前衛劇団ウースター・グループが昨年の「フィードル」に続き、3月にチェーホフの三人姉妹を基にした「ブレス・アップ」を上演し、200人ほどの劇場は芸術家、そのもどき、演劇マニアで満員であった。舞台には3台のテレビモニターが置かれ、なぜか日本の古い時代劇やら盆踊りのシーンや怪獣映画が映し出されていた。最近人気のウィリアムズバーグ地区ではガラパゴスという劇場で前衛劇団コラプサブル・ジラフやラジオホールが脚本を解体したり、音響効果、モニター、ビデオカメラなどを用いて実験的な演劇をしている。劇場の座席は階段状でクッションが置いてあるだけで、40人ぐらいで一杯になる規模だ。私が行った時はともに入場料が5ドル(600円ほど)で、劇場内にアイスボックスがあり、入っているビールを勝手にとってただで飲むことができた。また観客は上演中にビールを飲みながら、平気でたばこを吸っていた。

2003年4月15日
川島裕次

 

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